42. 匂宮(1首)
1. おぼつかな 誰れに問はまし いかにして 初めも果ても 知らぬわが身ぞ
43. 紅梅(4首)
1. 心ありて 風の匂はす 園の梅に まづ鴬の 訪はずやあるべき
2. 花の香に 誘はれぬべき 身なりせば 風のたよりを 過ぐさましやは
3. 本つ香の 匂へる君が 袖触れば 花もえならぬ 名をや散らさむ
4. 花の香を 匂はす宿に 訪めゆかば 色にめづとや 人の咎めむ
44. 竹河(24首)
1. 折りて見ば いとど匂ひも まさるやと すこし色めけ 梅の初花
2. よそにては もぎ木なりとや 定むらむ 下に匂へる 梅の初花
3. 人はみな 花に心を 移すらむ 一人ぞ惑ふ 春の夜の闇
4. をりからや あはれも知らむ 梅の花 ただ香ばかりに 移りしもせじ
5. 竹河の 橋うちいでし 一節に 深き心の 底は知りきや
6. 竹河に 夜を更かさじと いそぎしも いかなる節を 思ひおかまし
7. 桜ゆゑ 風に心の 騒ぐかな 思ひぐまなき 花と見る見る
8. 咲くと見て かつは散りぬる 花なれば 負くるを深き 恨みともせず
9. 風に散る ことは世の常 枝ながら 移ろふ花を ただにしも見じ
10. 心ありて 池のみぎはに 落つる花 あわとなりても わが方に寄れ
11. 大空の 風に散れども 桜花 おのがものとぞ かきつめて見る
12. 桜花 匂ひあまたに 散らさじと おほふばかりの 袖はありやは
13. つれなくて 過ぐる月日を かぞへつつ もの恨めしき 暮の春かな
14. いでやなぞ 数ならぬ身に かなはぬは 人に負けじの 心なりけり
15. わりなしや 強きによらむ 勝ち負けを 心一つに いかがまかする
16. あはれとて 手を許せかし 生き死にを 君にまかする わが身とならば
17. 花を見て 春は暮らしつ 今日よりや しげき嘆きの 下に惑はむ
18. 今日ぞ知る 空を眺むる けしきにて 花に心を 移しけりとも
19. あはれてふ 常ならぬ世の 一言も いかなる人に かくるものぞは
20. 生ける世の 死には心に まかせねば 聞かでややまむ 君が一言
21. 手にかくる ものにしあらば 藤の花 松よりまさる 色を見ましや
22. 紫の 色はかよへど 藤の花 心にえこそ かからざりけれ
23. 竹河の その夜のことは 思ひ出づや しのぶばかりの 節はなけれど
24. 流れての 頼めむなしき 竹河に 世は憂きものと 思ひ知りにき
45. 橋姫(13首)
1. うち捨てて つがひ去りにし 水鳥の 仮のこの世に たちおくれけむ
2. いかでかく 巣立ちけるぞと 思ふにも 憂き水鳥の 契りをぞ知る
3. 泣く泣くも 羽うち着する 君なくは われぞ巣守に なりは果てまし
4. 見し人も 宿も煙に なりにしを 何とてわが身 消え残りけむ
5. 世を厭ふ 心は山に かよへども 八重立つ雲を 君や隔つる
6. あと絶えて 心澄むとは なけれども 世を宇治山に 宿をこそ借れ
7. 山おろしに 耐へぬ木の葉の 露よりも あやなくもろき わが涙かな
8. あさぼらけ 家路も見えず 尋ね来し 槙の尾山は 霧こめてけり
9. 雲のゐる 峰のかけ路を 秋霧の いとど隔つる ころにもあるかな
10. 橋姫の 心を汲みて 高瀬さす 棹のしづくに 袖ぞ濡れぬる
11. さしかへる 宇治の河長 朝夕の しづくや袖を 朽たし果つらむ
12. 目の前に この世を背く 君よりも よそに別るる 魂ぞ悲しき
13. 命あらば それとも見まし 人知れぬ 岩根にとめし 松の生ひ末
46. 椎本(21首)
1. 山風に 霞吹きとく 声はあれど 隔てて見ゆる 遠方の白波
2. 遠方こちの 汀に波は 隔つとも なほ吹きかよへ 宇治の川風
3. 山桜 匂ふあたりに 尋ね来て 同じかざしを 折りてけるかな
4. かざし折る 花のたよりに 山賤の 垣根を過ぎぬ 春の旅人
5. われなくて 草の庵は 荒れぬとも このひとことは かれじとぞ思ふ
6. いかならむ 世にかかれせむ 長き世の 契りむすべる 草の庵は
7. 牡鹿鳴く 秋の山里 いかならむ 小萩が露の かかる夕暮
8. 涙のみ 霧りふたがれる 山里は 籬に鹿ぞ 諸声に鳴く
9. 朝霧に 友まどはせる 鹿の音を おほかたにやは あはれとも聞く
10. 色変はる 浅茅を見ても 墨染に やつるる袖を 思ひこそやれ
11. 色変はる 袖をば露の 宿りにて わが身ぞさらに 置き所なき
12. 秋霧の 晴れぬ雲居に いとどしく この世をかりと 言ひ知らすらむ
13. 君なくて 岩のかけ道 絶えしより 松の雪をも なにとかは見る
14. 奥山の 松葉に積もる 雪とだに 消えにし人を 思はましかば
15. 雪深き 山のかけはし 君ならで またふみかよふ 跡を見ぬかな
16. つららとぢ 駒ふみしだく 山川を しるべしがてら まづや渡らむ
17. 立ち寄らむ 蔭と頼みし 椎が本 空しき床に なりにけるかな
18. 君が折る 峰の蕨と 見ましかば 知られやせまし 春のしるしも
19. 雪深き 汀の小芹 誰がために 摘みかはやさむ 親なしにして
20. つてに見し 宿の桜を この春は 霞隔てず 折りてかざさむ
21. いづことか 尋ねて折らむ 墨染に 霞みこめたる 宿の桜を
47. 総角(31首)
1. あげまきに 長き契りを 結びこめ 同じ所に 縒りも会はなむ
2. ぬきもあへず もろき涙の 玉の緒に 長き契りを いかが結ばむ
3. 山里の あはれ知らるる 声々に とりあつめたる 朝ぼらけかな
4. 鳥の音も 聞こえぬ山と 思ひしを 世の憂きことは 訪ね来にけり
5. おなじ枝を 分きて染めける 山姫に いづれか深き 色と問はばや
6. 山姫の 染むる心は わかねども 移ろふ方や 深きなるらむ
7. 女郎花 咲ける大野を ふせぎつつ 心せばくや しめを結ふらむ
8. 霧深き 朝の原の 女郎花 心を寄せて 見る人ぞ見る
9. しるべせし 我やかへりて 惑ふべき 心もゆかぬ 明けぐれの道
10. かたがたに くらす心を 思ひやれ 人やりならぬ 道に惑はば
11. 世の常に 思ひやすらむ 露深き 道の笹原 分けて来つるも
12. 小夜衣 着て馴れきとは 言はずとも かことばかりは かけずしもあらじ
13. 隔てなき 心ばかりは 通ふとも 馴れし袖とは かけじとぞ思ふ
14. 中絶えむ ものならなくに 橋姫の 片敷く袖や 夜半に濡らさむ
15. 絶えせじの わが頼みにや 宇治橋の 遥けきなかを 待ちわたるべき
16. いつぞやも 花の盛りに 一目見し 木のもとさへや 秋は寂しき
17. 桜こそ 思ひ知らすれ 咲き匂ふ 花も紅葉も 常ならぬ世を
18. いづこより 秋は行きけむ 山里の 紅葉の蔭は 過ぎ憂きものを
19. 見し人も なき山里の 岩垣に 心長くも 這へる葛かな
20. 秋はてて 寂しさまさる 木のもとを 吹きな過ぐしそ 峰の松風
21. 若草の ね見むものとは 思はねど むすぼほれたる 心地こそすれ
22. 眺むるは 同じ雲居を いかなれば おぼつかなさを 添ふる時雨ぞ
23. 霰降る 深山の里は 朝夕に 眺むる空も かきくらしつつ
24. 霜さゆる 汀の千鳥 うちわびて 鳴く音悲しき 朝ぼらけかな
25. 暁の 霜うち払ひ 鳴く千鳥 もの思ふ人の 心をや知る
26. かき曇り 日かげも見えぬ 奥山に 心をくらす ころにもあるかな
27. くれなゐに 落つる涙も かひなきは 形見の色を 染めぬなりけり
28. おくれじと 空ゆく月を 慕ふかな つひに住むべき この世ならねば
29. 恋ひわびて 死ぬる薬の ゆかしきに 雪の山にや 跡を消なまし
30. 来し方を 思ひ出づるも はかなきを 行く末かけて なに頼むらむ
31. 行く末を 短きものと 思ひなば 目の前にだに 背かざらなむ
48. 早蕨(15首)
1. 君にとて あまたの春を 摘みしかば 常を忘れぬ 初蕨なり
2. この春は 誰れにか見せむ 亡き人の かたみに摘める 峰の早蕨
3. 折る人の 心にかよふ 花なれや 色には出でず 下に匂へる
4. 見る人に かこと寄せける 花の枝を 心してこそ 折るべかりけれ
5. はかなしや 霞の衣 裁ちしまに 花のひもとく 折も来にけり
6. 見る人も あらしにまよふ 山里に 昔おぼゆる 花の香ぞする
7. 袖ふれし 梅は変はらぬ 匂ひにて 根ごめ移ろふ 宿やことなる
8. さきに立つ 涙の川に 身を投げば 人におくれぬ 命ならまし
9. 身を投げむ 涙の川に 沈みても 恋しき瀬々に 忘れしもせじ
10. 人はみな いそぎたつめる 袖の浦に 一人藻塩を 垂るる海人かな
11. 塩垂るる 海人の衣に 異なれや 浮きたる波に 濡るるわが袖
12. ありふれば うれしき瀬にも 逢ひけるを 身を宇治川に 投げてましかば
13. 過ぎにしが 恋しきことも 忘れねど 今日はたまづも ゆく心かな
14. 眺むれば 山より出でて 行く月も 世に住みわびて 山にこそ入れ
15. しなてるや 鳰の湖に 漕ぐ舟の まほならねども あひ見しものを
49. 宿木(24首)
1. 世の常の 垣根に匂ふ 花ならば 心のままに 折りて見ましを
2. 霜にあへず 枯れにし園の 菊なれど 残りの色は あせずもあるかな
3. 今朝の間の 色にや賞でむ 置く露の 消えぬにかかる 花と見る見る
4. よそへてぞ 見るべかりける 白露の 契りかおきし 朝顔の花
5. 消えぬまに 枯れぬる花の はかなさに おくるる露は なほぞまされる
6. 大空の 月だに宿る わが宿に 待つ宵過ぎて 見えぬ君かな
7. 山里の 松の蔭にも かくばかり 身にしむ秋の 風はなかりき
8. 女郎花 しをれぞまさる 朝露の いかに置きける 名残なるらむ
9. おほかたに 聞かましものを ひぐらしの 声恨めしき 秋の暮かな
10. うち渡し 世に許しなき 関川を みなれそめけむ 名こそ惜しけれ
11. 深からず 上は見ゆれど 関川の 下の通ひは 絶ゆるものかは
12. いたづらに 分けつる道の 露しげみ 昔おぼゆる 秋の空かな
13. また人に 馴れける袖の 移り香を わが身にしめて 恨みつるかな
14. みなれぬる 中の衣と 頼めしを かばかりにてや かけ離れなむ
15. 結びける 契りことなる 下紐を ただ一筋に 恨みやはする
16. 宿り木と 思ひ出でずは 木のもとの 旅寝もいかに さびしからまし
17. 荒れ果つる 朽木のもとを 宿りきと 思ひおきける ほどの悲しさ
18. 穂に出でぬ もの思ふらし 篠薄 招く袂の 露しげくして
19. 秋果つる 野辺のけしきも 篠薄 ほのめく風に つけてこそ知れ
20. すべらきの かざしに折ると 藤の花 及ばぬ枝に 袖かけてけり
21. よろづ世を かけて匂はむ 花なれば 今日をも飽かぬ 色とこそ見れ
22. 君がため 折れるかざしは 紫の 雲に劣らぬ 花のけしきか
23. 世の常の 色とも見えず 雲居まで たち昇りたる 藤波の花
24. 貌鳥の 声も聞きしに かよふやと 茂みを分けて 今日ぞ尋ぬる
50. 東屋(11首)
1. 見し人の 形代ならば 身に添へて 恋しき瀬々の なでものにせむ
2. みそぎ河 瀬々に出ださむ なでものを 身に添ふ影と 誰れか頼まむ
3. しめ結ひし 小萩が上も 迷はぬに いかなる露に 映る下葉ぞ
4. 宮城野の 小萩がもとと 知らませば 露も心を 分かずぞあらまし
5. ひたぶるに うれしからまし 世の中に あらぬ所と 思はましかば
6. 憂き世には あらぬ所を 求めても 君が盛りを 見るよしもがな
7. 絶え果てぬ 清水になどか 亡き人の 面影をだに とどめざりけむ
8. さしとむる 葎やしげき 東屋の あまりほど降る 雨そそきかな
9. 形見ぞと 見るにつけては 朝露の ところせきまで 濡るる袖かな
10. 宿り木は 色変はりぬる 秋なれど 昔おぼえて 澄める月かな
11. 里の名も 昔ながらに 見し人の 面変はりせる 閨の月影
51. 浮舟(22首)
1. まだ古りぬ 物にはあれど 君がため 深き心に 待つと知らなむ
2. 長き世を 頼めてもなほ 悲しきは ただ明日知らぬ 命なりけり
3. 心をば 嘆かざらまし 命のみ 定めなき世と 思はましかば
4. 世に知らず 惑ふべきかな 先に立つ 涙も道を かきくらしつつ
5. 涙をも ほどなき袖に せきかねて いかに別れを とどむべき身ぞ
6. 宇治橋の 長き契りは 朽ちせじを 危ぶむ方に 心騒ぐな
7. 絶え間のみ 世には危ふき 宇治橋を 朽ちせぬものと なほ頼めとや
8. 年経とも 変はらむものか 橘の 小島の崎に 契る心は
9. 橘の 小島の色は 変はらじを この浮舟ぞ 行方知られぬ
10. 峰の雪 みぎはの氷 踏み分けて 君にぞ惑ふ 道は惑はず
11. 降り乱れ みぎはに凍る 雪よりも 中空にてぞ 我は消ぬべき
12. 眺めやる そなたの雲も 見えぬまで 空さへ暮るる ころのわびしさ
13. 水まさる 遠方の里人 いかならむ 晴れぬ長雨に かき暮らすころ
14. 里の名を わが身に知れば 山城の 宇治のわたりぞ いとど住み憂き
15. かき暮らし 晴れせぬ峰の 雨雲に 浮きて世をふる 身をもなさばや
16. つれづれと 身を知る雨の 小止まねば 袖さへいとど みかさまさりて
17. 波越ゆる ころとも知らず 末の松 待つらむとのみ 思ひけるかな
18. いづくにか 身をば捨てむと 白雲の かからぬ山も 泣く泣くぞ行く
19. 嘆きわび 身をば捨つとも 亡き影に 憂き名流さむ ことをこそ思へ
20. からをだに 憂き世の中に とどめずは いづこをはかと 君も恨みむ
21. 後にまた あひ見むことを 思はなむ この世の夢に 心惑はで
22. 鐘の音の 絶ゆる響きに 音を添へて わが世尽きぬと 君に伝へよ
52. 蜻蛉(11首)
1. 忍び音や 君も泣くらむ かひもなき 死出の田長に 心通はば
2. 橘の 薫るあたりは ほととぎす 心してこそ 鳴くべかりけれ
3. 我もまた 憂き古里を 荒れはてば 誰れ宿り木の 蔭をしのばむ
4. あはれ知る 心は人に おくれねど 数ならぬ身に 消えつつぞ経る
5. 常なしと ここら世を見る 憂き身だに 人の知るまで 嘆きやはする
6. 荻の葉に 露吹き結ぶ 秋風も 夕べぞわきて 身にはしみける
7. 女郎花 乱るる野辺に 混じるとも 露のあだ名を 我にかけめや
8. 花といへば 名こそあだなれ 女郎花 なべての露に 乱れやはする
9. 旅寝して なほこころみよ 女郎花 盛りの色に 移り移らず
10. 宿貸さば 一夜は寝なむ おほかたの 花に移らぬ 心なりとも
11. ありと見て 手にはとられず 見ればまた 行方も知らず 消えし蜻蛉
53. 手習(28首)
1. 身を投げし 涙の川の 早き瀬を しがらみかけて 誰れか止めし
2. 我かくて 憂き世の中に めぐるとも 誰れかは知らむ 月の都に
3. あだし野の 風になびくな 女郎花 我しめ結はむ 道遠くとも
4. 移し植ゑて 思ひ乱れぬ 女郎花 憂き世を背く 草の庵に
5. 松虫の 声を訪ねて 来つれども また萩原の 露に惑ひぬ
6. 秋の野の 露分け来たる 狩衣 葎茂れる 宿にかこつな
7. 深き夜の 月をあはれと 見ぬ人や 山の端近き 宿に泊らぬ
8. 山の端に 入るまで月を 眺め見む 閨の板間も しるしありやと
9. 忘られぬ 昔のことも 笛竹の つらきふしにも 音ぞ泣かれける
10. 笛の音に 昔のことも 偲ばれて 帰りしほども 袖ぞ濡れにし
11. はかなくて 世に古川の 憂き瀬には 尋ねも行かじ 二本の杉
12. 古川の 杉のもとだち 知らねども 過ぎにし人に よそへてぞ見る
13. 心には 秋の夕べを 分かねども 眺むる袖に 露ぞ乱るる
14. 山里の 秋の夜深き あはれをも もの思ふ人は 思ひこそ知れ
15. 憂きものと 思ひも知らで 過ぐす身を もの思ふ人と 人は知りけり
16. なきものに 身をも人をも 思ひつつ 捨ててし世をぞ さらに捨てつる
17. 限りぞと 思ひなりにし 世の中を 返す返すも 背きぬるかな
18. 岸遠く 漕ぎ離るらむ 海人舟に 乗り遅れじと 急がるるかな
19. 心こそ 憂き世の岸を 離るれど 行方も知らぬ 海人の浮木を
20. 木枯らしの 吹きにし山の 麓には 立ち隠すべき 蔭だにぞなき
21. 待つ人も あらじと思ふ 山里の 梢を見つつ なほぞ過ぎ憂き
22. おほかたの 世を背きける 君なれど 厭ふによせて 身こそつらけれ
23. かきくらす 野山の雪を 眺めても 降りにしことぞ 今日も悲しき
24. 山里の 雪間の若菜 摘みはやし なほ生ひ先の 頼まるるかな
25. 雪深き 野辺の若菜も 今よりは 君がためにぞ 年も摘むべき
26. 袖触れし 人こそ見えね 花の香の それかと匂ふ 春のあけぼの
27. 見し人は 影も止まらぬ 水の上に 落ち添ふ涙 いとどせきあへず
28. 尼衣 変はれる身にや ありし世の 形見に袖を かけて偲ばむ
54. 夢浮橋(1首)
1. 法の師と 尋ぬる道を しるべにて 思はぬ山に 踏み惑ふかな